「メタバースはオワコン」という言葉を定期的に耳にしている方もおられるでしょう。
この「オワコン」という言葉とは裏腹に、現在、メタバースは理想の形に技術が近づいてきて、メタバースという言葉を意識せずに利活用できるフェーズに入っており、今後さらなる発展が期待できるプラットフォームとなっています。
オワコンと言われる
理由
メタバースという言葉が生まれたのは1992年、ニール・スティーヴンスンのSF小説「スノウ・クラッシュ」であり、その概念に近い仮想空間的サービスが出始めたのが2000年ごろからと言われています。
この当時、メタバースのようなサービスを楽しむには高価で高性能なパソコンが必須であり、今ほど通信回線が速くもなかったため、理想の形はまだ実現できていませんでした。
その後、端末の高性能化や回線の高速化に合わせて、思いつきのように立ち上げられたサービスが短命に終わるということが繰り返され、「オワコン」のイメージがつきまとったと考えられます。
2021年から、メタバースの代名詞のようになっているVRChatが一部のマニアの間でブームとなり、コロナ禍のリモート需要も相まって広く話題となりました。
これらはVRゴーグルや高性能なゲーミングPCを用いることで十分に楽しむことができるサービスであり、初期費用としてのハードルが高くなっていましたが、4〜5万円程度の高性能で安価なVRゴーグル(当時はMeta Quest2、現在のモデルで言えばMeta Quest3S)やゲーミングPCの低価格化により堅実にユーザー数を増やしていました。
現在はコロナ禍で話題になっていた他のメタバースがサービス終了していたり、VRChatも話題性という意味では落ち着いている(※)ため、それを「オワコン」と表現する方もおられます。
しかし、VRChatやclusterのように人気のサービスは着実にユーザー数を増やしながら利用されているのが現状です。
※一般の方の話題に上がる頻度は落ち着いたという意味で、ユーザー数を増やしながら堅調な人気を得ている状況です。
現在のメタバース
私たちが特に注目しているメタバースプラットフォームは、日本発のサービスclusterです。
VRChatに似たサービスのclusterは、VRゴーグルがあれば没入感ある形で楽しむことができるのですが、スマホだけでも誰でも無料で簡単にアクセスできるというのが大きな特徴の一つです。
メタバースという言葉を意識することなくスマホゲームのような感覚で参加することができ、サービスはすべて日本語であるためメタバースのハードルをぐっと下げています。
clusterは行政が社会問題の解決に利用したり、企業が自社のPRに利用することも増えており、産業メタバースの分野でも大きな注目を浴びています。
総務省も本腰を入れ、メタバースに関するガイドラインなども発表しており、2025年9月には「社会課題の解決に向けたメタバース導入の手引き」を公表するなどの取り組みも進めています。
今後の展望
この先、回線速度やモバイル端末のさらなる進化により、エンタメ分野はもちろん、産業やマーケティング等でさらなる利活用が見込まれています。
エンタメ活用の加速 → 現在でも雑談交流、音楽ライブ、トークイベント、ゲームなどに使われていますが、これらのクオリティがさらに上がってより没入感が高まるリアルなものになる。
産業利用や社会問題の解決方法として(製造業・医療・教育・行政) の広がり → 総務省の「社会課題の解決に向けたメタバース導入の手引き」にも事例が取り上げられており、これらをモデルケースに利活用が加速する。
AIとの融合 → clusterのようなサービスはAIとの親和性も高く、すでにメタバース空間で自然に会話できるガイドのサービスなどの準備が始まっている。
軽量化・端末の進化 → VRゴーグルに変わる「VRグラス(スマートメガネ)」がスマホと同じくらい身近なものになりつつあり、さらなる没入感とシームレスな体験が期待されている。
若年層の成長 → メタバースに当たり前に触れている層が成長する(メタバースネイティブ)ことにより「メタバース」という言葉の特別感が薄れ、日常のインフラとして当たり前のように浸透する(現在でもマインクラフトやclusterが教育現場で用いられています)
ファンマーケティングの土台 → 広告媒体はテレビCMからインフルエンサーへと広がったが、その効果も頭打ちが指摘されている。
次に注目されているのがファンマーケティング。ファン同士がブランドや商品に愛着を持ち、自然に発信し合うことで、従来のCMやインフルエンサーでは届かなかった層へリーチできる。
メタバースはこの「ファン同士の交流と共体験」を没入感ある形で加速させる場として、ファンマーケティングの土台になり得る。
まとめ
回線速度やモバイル端末の性能は今後も進化し続け、日常生活や産業活動に自然に組み込まれるフェーズへ移行しつつあります。
「オワコン」と呼ばれるのは一時的な熱狂が落ち着いたことによるものであり、むしろ堅実に成長しているのが現状です。
今後はAIやAR技術との融合により、メタバースというものに特別な意識しなくても利用できる社会インフラへと発展していくでしょう。



